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Snowy Institute

6軸力センサに関する調査

6軸力センサの利用に関する連載の1本目(全3本予定)のお話です. 行った調査について簡単にまとめています. rogy Advent Calendar 2020 の6日目の記事となります.

はじめに

力センサを使う必要が出ていたので,調べてみました. 使う話は次の記事でする予定です.

6軸力センサ

6軸力センサ(あるいは6軸力覚センサ)とは,ある一点に加わる力の次元を持つ量,すなわち並進力とモーメントを計測するためのセンサです. 私たちが暮らす空間は3次元なので,並進力とモーメントがそれぞれ3次元ずつ,計6次元の量を扱うことになるのです. ここで,「N次元」と「N軸」は,およそ同じ意味を持つことを記しておきます.

6軸力センサの原理

力センサは,様々な方法で実装されていますが,根本となる原理はほとんど同じです. センサに力(モーメント)が加わると,センサの中の「起歪体」と呼ばれる部品にひずみが生じます. このひずみの大きさ,すなわち変位を調べることにより,その大きさがわかる,という仕組みです.

起歪体を用いる形式では,起歪体の材料特性が重要になってきます. 例えば,起歪体が理想的な弾性特性に近い振る舞いをすれば,精度は必然的に上昇します. またセンサの破壊は,応力を計測するための起歪体の弾性の降伏による部分が大きいです. フレームは比較的好きに作れますが,起歪体は適度に弾性変形してくれないと,起歪体としての意味がなくなってしまうからです. 容量の大きな力センサが重くなりがちなのは,このような事情があるからと言えるでしょう.

以下では,測定の各形式を簡単に説明します.

ひずみゲージ式

古典的でかつ現在も主流な形式です. ひずみゲージはひずみ(変位)に応じて抵抗値が変わる素子です. ひずみゲージ自体は安価なものだと,秋葉原の部品屋で千円程度で入手することができます. 起歪体に直接ひずみゲージを貼り付けることでひずみを測ります. 貼り付け場所や向きの自由度があるため,差動測定等の精度を上げる工夫が簡単にできるという利点があります. また同様の理由により,内部構造が既知の場合,校正が比較的簡単に行えることが知られています.

レプトリノ社の製品新東工業社のZYXerシリーズはひずみゲージ式のものとなっています.

原理に関するより詳細な事項については,レプトリノ社の方が書いた解説もご参照ください.

光学式

「光学式」はひずみの変位をレーザー等で計測します. 起歪体と非接触なため,計測に用いる部分の機械的な破損の心配が小さいことが特徴と言えるでしょう.

OnRobot社のHEXシリーズは光学式のようです.

また研究レベルではありますが,FingerVisionと呼ばれる技術が開発されています. 広義では光学式の力センサはと言えるでしょう. 6軸センサとなり得るかについてはまだわかりませんが,弾性材料+ステレオカメラという構成で非常に安価に製作可能であり,また一点への力だけでなく圧力分布の推定等ができる可能性もあり,期待されます.

project/FingerVision - Akihiko's Tech Note

圧電式

「圧電式」は,起歪体に水晶などの,力が加わった際に電位が発生する素子を用いるものです. ひずみゲージ式と同じく,比較的長い歴史があるようです. 圧電式は起歪体に金属を用いないため,小型・軽量化がしやすい利点があります. 一方で圧電素子の都合上,ドリフトが起こりやすいという特徴があり,長時間の測定には向いていないと言えます.

圧電式に関するより詳細な事項については,HBK社の解説もご参照ください.

静電容量式

「静電容量式」は,起歪体に導電体の平行平板を取り付けることで,コンデンサとしての構造を与え,ゆがみ方によって変化する静電容量から力を測定します. 近年使われるようになった形式で,力センサの軽量化が期待されている形式でもあります.

ワコーテック社のDynPickシリーズは静電容量式を用いています.

おわりに

簡単に,力センサの原理と,国内で入手可能なものを簡単にまとめてみました. 測定原理によって若干の得意不得意があるようですが,大まかには圧電式か否かの選択が支配的で,圧電式以外の中からの選択はあまり大差がないように見受けられます.

一方で,経済的な話をすると,実際に"比較的"気軽に手を出せるものは,20万円以下で購入可能なレプトリノ社とワコーテック社の,事実上二者択一状態になるのかなとも感じました. 特にレプトリノ社は価格や詳細仕様をHPで公開しているため,問い合わせが不要というだけでかなり有り難いかなと思っています(※筆者はレプトリノ社の関係者ではありません).

記事を書き終えたところで 【2020年版】力覚センサー6選・製造メーカー11社一覧 | メトリー というものも見つけたので,こちらも眺めてみるといいかもしれません.

本当はこの記事では,使うところまで紹介するつもりでしたが,力尽きました. 一旦ここで書くのを止めて,公開しようと思います. 次の記事をお待ちください.